機会と結果の政治的不平等に関する総合的実証研究:
政治的不平等生成メカニズムの解明(日本学術振興会科学研究費補助金・基盤研究(A)(一般)研究課題番号20H00061)

機会と結果の政治的不平等に関する調査プロジェクト

研究概要ABOUT

国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)は、「誰も取り残さない」社会を目指しています。そのためには、個々人の政治的諸権利が平等に保障される必要があります。しかし、投票などの参政権が制度的に保障されていたとしても、実質的に人々の声が平等に政治に反映されるわけではありません。例えば、社会経済的地位(収入、職業、学歴など)や社会的属性(性別、年齢、エスニシティなど)、社会活動(交友関係、情報行動など)によって、政治参加の程度が異なっていたり、政治に及ぼす影響力が異なっていたりします。

さらに近年では、経済的・社会的不平等および貧困の拡大が問題視され、これらへの政治的対応が求められています。しかし、社会経済的地位や属性が優位にある人々に対して政策的応答性が高いとしたら、かえって不平等を助長するおそれがあります。このことは今日、大きな問題とされている社会的排除のメカニズムを示唆しています。したがって、経済・社会的不平等と政治的不平等の相互関係を実証的に明確に捉える研究が急務です。

以上の点は、個々人の意思の平等な反映を前提とする民主政にとっても重要な問題であり、不平等を取り上げた政治理論研究、あるいは、政治参加および政治的影響力の実証研究において不平等を扱ったものには膨大な蓄積があります。しかし、これまでの実証研究においては、政治参加や政策形成といった個別の側面における不平等の解明に取り組んできたものの、これらを統合的にみる視点は看過されてきました。近年になって社会情勢を反映し、代表制と政治的不平等との関係を正面に据えた研究がアメリカを中心に登場しつつあります。

こうした学術的背景をふまえ、本研究では政治的不平等に関するHowWhyを問いとして設定します。

①現実社会における政治的不平等の実態はどうなっているのか?

政治への利益表出には、政治に働きかける政治参加の側面(政治的機会)と、決定された政策内容に価値や利益が反映されているという政策応答の側面(政治的結果)があります。それぞれの側面における社会経済的地位や社会的属性による程度の差を捉え、政治的不平等の実態を明らかにします。

②政治的不平等がなぜ生じるのか?

上記の実態に関する知見に基づきながら、政治参加と政策応答という政治的不平等の2つの側面の相互関係を明らかにします。さらに、経済・社会的不平等が政治的不平等の各側面にどのように影響を及ぼすのか、また、その逆に政治的不平等が経済・社会的不平等にどのような影響を及ぼすのかを検討し、不平等がなぜ生じるのか、そのメカニズムを包括的に解明します。

上記の問いを解明するために、具体的に下記の調査・分析に取り組みます。第1に、有権者に対する質問紙調査に基づいて、収入、職業、学歴、性別、年齢などによる政治参加の不平等を把握します。第2に、有権者の利益代表性や政策形成過程の公正性に対する評価という観点から、政治的代表制の不平等を検討します。第3に、様々な資料を用いて利益団体や市民団体の政治行動や政策選好を把握します。政党・議員や省庁といった政治的アクターとの関係や政治過程におけるポジションを明らかにし、団体の利益表出による政治的バイアスを検討します。第4に、個人や団体の政策選好と策定された政策との照合によって政策応答における不平等を把握します。これらをもとに、参加と応答の間を媒介するメカニズムを明確化した政治的不平等の生成モデルを構築します。