筑波大学デジタルデモクラシーと
政治的不平等(DDPI)プロジェクト

[9/5 14:00-]「雇用改革と社会的不平等ー産業的シティズンシップという轍ー」(第13回DDPIセミナー)

DDPIプロジェクトでは、格差・不平等の政策的解決、そのためのデジタル技術の可能性(デジタル民主主義)などをテーマとしつつ、セミナー・シリーズを開催しております。

今回は再びオンライン開催に戻り、『雇用改革と社会的不平等―産業的シティズンシップという轍―』と題し、上智大学総合人間科学部社会学科教授である今井順先生をお招きして、現代社会にあって格差・不平等問題を考えるときに避けて通ることのできない一大トピックである日本の雇用関係についてお話をいただきます。

かつての日本の語り草は「企業中心社会」という神話でした。高卒・大卒時の一括採用に始まり、企業への高い忠誠により企業に奉仕する「カイシャ人間」の絶大な貢献と、それを生み出す長期雇用慣行、企業閉鎖的な人的資源管理、メンバーシップ前提の能力開発といった特徴が賞賛された時代があったのです。とはいえ、それは大企業・公務員中心のものに過ぎず、労働組合も産業セクター内の交渉関係の形成に注力したことから、実のところ日本社会の大多数を占める中小零細企業とその労働者、また、自営業や個人事業主は捨象されがちで、この二重構造が批判されることもありました。

そして、現在われわれが目にする大きな雇用問題は、いわゆる「非正規」に関連するものでしょう。1990年代から本格化した労働分野の規制緩和は、バブル経済崩壊に始まった大企業のリストラや新卒の就職難とも結びつき、閉鎖的な雇用関係の枠外にあって調整弁として位置づけられた派遣労働者と人材派遣業の急拡大を生み出し、正規社員に比しての低賃金もあいまって、労働者の世界に大きな分断を生じさせています。

このような過去の二重構造、近時の「非正規」の問題などが重畳に存在する現代の雇用関係にあって、大企業や公務員の雇用慣行が新たな普遍や平等をもたらしてもいないことには注意が必要です。雇用慣行のモメンタムは今でも強固な企業的シチズンシップとして残り、経済関係の上流にある彼ら大企業や公務員の雇用慣行が、婚姻・家族、子育てや教育、社会保障や福祉、居住といった社会慣行や公式制度をまだまだ強く制約しています。

本セミナーでは、労働社会学や社会階層論がご専門の今井先生より、雇用関係・雇用慣行からみた日本社会のありようについて知見をご提供いただき、われわれが格差・不平等問題に切り込んでゆくためのアイデアについて幅広く議論してまいります。
ご関心おありの方はぜひご参加ください。
第13 回 DDPI セミナー雇用改革と社会的不平等―産業的シティズンシップという轍―
開催日時 2022年9月5日(月)14:00~15:30
開催場所 オンライン
報告者  今井順(上智大学総合人間科学部社会学科教授)
参加費用 無料
事前申し込み方法

参加希望の方は、下記リンクまたはポスター中のQRコードよりお申し込みください。

https://forms.gle/ZTCGYMhQQGL2GSNa9

お問い合わせ先 DDPI@japan.tsukuba.ac.jp